【社説で経済を読む】米国はドゥテルテ氏を非難できるか (1/3ページ)

 □産経新聞客員論説委員・五十嵐徹

 外交音痴の暴言王に過ぎないのか、はたまた、したたかなマキャベリストなのか。フィリピンのドゥテルテ大統領の型破りの言動に、いまだ国際社会は真意を測りかねている。

 一つだけ確実に言えるのは、南シナ海の問題をめぐり形勢不利な状態にあった中国が、ここにきて元気づいていることだ。オランダ・ハーグの常設仲裁裁判所は7月、力による現状変更を企図する中国の権利主張を否定する裁定を下したが、ドゥテルテ氏は争いの相手であるその中国と「問題の棚上げ」で合意したからだ。

 その直後、日本を訪れたドゥテルテ氏は安倍晋三首相との首脳会談で、今度は「裁定は中比両国を拘束する」との立場を示した。日本が中国と対立している点についても「常に日本の側に立つつもりだ」と語った。

 上から目線は避けよ

 日比首脳会談を受けた10月28日付の各紙社説は「南シナ海問題は法の支配に基づき解決する、という基本姿勢を確認したことは成果」(産経)などと一様に評価したものの、大統領は会談に先立つ講演でも2年以内に米軍の撤退を求める方針を示すなど、相変わらず中国を喜ばせるような対米批判を繰り返している。

 今回の日中歴訪には、「日中双方に配慮して経済的な実利を得る『天秤(てんびん)外交』の意図もうかがえる」(読売)とする冷めた見方がある。

安倍首相は明示的に人権に言及しなかったが、これを強く批判したのは朝日と毎日だ