「目的は、限られた地域の空気をきれいにする方法を提供することではない。クリーンな空気を感覚的に体験することで、美しく、クリーンな未来を感じてもらうことにある」と、同氏は語る。その上で、「このタワーは、スタートにすぎない」と述べ、問題解決のため、政府と市民の双方が積極的に行動することが必要だと訴えた。
ただ、何とも間が悪いことに、稼働開始の3日後の10月2日、北京市政府は、深刻な大気汚染が連日続くとして今年後半では初の警報を発令した。北京では、暖房のための石炭使用が増える冬場に向け、大気汚染が悪化するが、北京の米大使館のウェブサイトによると、早くもPM2・5を含む汚染指数が2日に「健康に極めて悪い」レベルの281に達した。
タワーの効果はみじんもなく、かえって“焼け石に水”“蟷螂の斧”を露呈することになってしまったわけだ。
大気汚染による健康被害は深刻だ。タワーが稼働する2日前の9月27日、世界保健機関(WHO)は、肺がんなどの関連疾患による死者が全世界で年間約300万人に上るとする報告書を発表した。
WHOはPM2・5の基準値を大気1立方メートル当たり年平均10マイクログラムと定めているが、衛星写真と地上約3000地点での観測結果を分析したところ、全世界の人口の92%が基準を超える場所で生活していることが分かった。