平成29年4月に予定する消費税再増税時に導入される軽減税率による減収分の穴埋めとして、たばこ増税が取り沙汰されている。果たして安定財源となり得るのか。公平性の観点から問題を指摘する声もある。ジャーナリストの須田慎一郎氏に話を聞いた。
安定財源とは、景気や経済の変動に左右されず、税収額が上振れも下振れもしないフラットな状態で推移する税制を指す。法人税、所得税といった直接税は影響を受けやすく、物やサービスを購入したときに負担する間接税は影響を受けにくいとされる。
須田氏は「景気が悪くなったからといって、1日3回の食事を2回に減らす人はいません。その意味で間接税は安定財源にほぼ等しいものとしてイメージされています」と説明する。
間接税の代表的なものに平成元年に導入された消費税があり、その他にたばこ税、酒税、入湯税など個々の物品、サービスに課せられる税がある。では、たばこ税も安定財源という位置付けでよいのかというと必ずしもそうではない。
「限界がある。許容範囲のうちは安定財源かもしれないけれど、ある一定の水準を超えて価格が上がってくると、それを機に喫煙をやめる人が出てきます。そして、たばこ税には懲罰的な税制という発想もあり、税収を上げることが目的ではないので、喫煙をやめさせるために高ければ高いほどいいという話になってしまう」(須田氏)
厚生労働省は毎年度のようにたばこ税引き上げを要望しているが、健康増進のために喫煙をやめさせることが目的とされる。さらに須田氏は、たばこの各銘柄が100円以上値上げされた2010年10月の大増税で、既にたばこ税は懲罰的段階に入ったとみている。
根拠として、日本たばこ協会が発表している年度別販売実績の上位20銘柄の推移を挙げる。低所得者向けといわれる廉価な「旧3級品」が10年度に初めて20位以内に顔を出し、14年度をみると「わかば」が6位、「エコー」が7位に入っている。