25日の上海株式市場は、中国人民銀行(中央銀行)が同日午前に公開市場操作で大規模な資金供給を行ったにもかかわらず、当局は株価下支え策に見切りを付けたとの観測が優勢となり、パニック売りが止まらなかった。同日夜になって、人民銀行は政策金利と預金準備率の26日からの同時引き下げを発表し、狼狽(ろうばい)ぶりを露呈した。
市場は「アクセルとブレーキを同時に踏むちぐはぐな金融政策が投資家心理を冷え込ませている」(証券アナリスト)と分析。後手に回ってばかりの対応の背後には、中国共産党内の権力闘争も見え隠れする。
人民銀行の公開市場操作は週2回の定例。ただ、18日、20日、25日の3回はいずれも1千億元を超える異例の規模だった。株式市場に直接流れる資金ではないが、金融不安回避に向けて強い姿勢を示した格好だ。
中国政府は23日、年金基金の株式投資を解禁したほか、24日には不動産市況の回復傾向などを理由に通年の経済成長率目標7・0%達成に改めて自信を示すなど、市場不安を払拭しようと躍起になっている。
しかし、11日には人民銀行が人民元切り下げを含む為替制度変更を突然行い、想定外だった金融市場を動揺させた。中国証券監督管理委員会は14日の公告で、原則として市場介入は行わないと表明。政策の方向性が不透明と受けとめた市場で株安に拍車がかかった。
日中関係筋は「中国共産党内部でいかなる手段を使ってでも株価を下支えして景気悪化を防ぎたい守旧派と、需給バランスによる市場の調整作用を重視して経済構造改革を急ぎたい改革派の権力闘争」が背後にあると指摘する。
習近平指導部は、経済成長率の段階的な減速を容認しながら、着実に構造改革を進めるマクロ経済政策運営を「新常態(ニューノーマル)」と名付けて指示してきた。しかし、輸出や消費の低迷など実体経済の悪化が改革を上回るスピードで進行し、党内部で経済政策の路線をめぐる論争が激化したとの観測もある。(上海 河崎真澄)