しかし、合意文書をめぐっては、外務省幹部ですら「具体的な何かを合意したものではない。状況は変わっていない」として緊張状態を緩和するだけの“効力”はないことを認めている。
首脳会談後に変化
首脳会談の翌月から中国軍の活動に変化も起きた。
自衛隊は先月4日に中国海軍の駆逐艦やフリゲート艦など4隻が鹿児島県の大隅海峡を通過し、同25日には宗谷海峡を抜けて東シナ海に向けて航行したことを確認。日本列島を周回する動きは25年7月以来で、自衛隊統合幕僚監部は「特異行動」として発表した。
先月6日以降には中国軍機が沖縄本島と宮古島の間を相次いで通過したが、これも9カ月ぶり。中旬には中国海軍艦艇が尖閣北方約70キロの海域で航行していることも確認された。
中谷元・防衛相は今月9日の記者会見で「中国の海軍による太平洋への進出回数が増加傾向にある。今後、中国は活動領域を一層拡大するとともに、活発化をさらに進めていくものと認識している」と警戒感を表明したが、一連の背後にある中国側の意図は明らかになっていない。