【ソウル=名村隆寛】「ナッツリターン」という流行語まで生み出した大韓航空をめぐる一連の騒動では、同族支配の横暴や官民癒着、醜聞の隠蔽(いんぺい)といった韓国財閥の典型的な“悪習”が次々と露呈した。
趙顕娥(チョ・ヒョナ)前副社長は、大韓航空を傘下に置く財閥、韓進グループの会長の長女で、財閥3世。韓国世論は、労せずして財閥企業の役員となった「お嬢さま」による権力をかさに着た横暴さと、同族財閥企業の身内重用の体質を猛烈に批判した。
大韓航空は朴正煕(パク・チョンヒ)政権当時、赤字続きの国営会社を韓進グループの創始者(趙氏の祖父)が引き継いで民営化した。
輸出主導型の経済成長を目指した韓国の財閥のほとんどは創業者一族による経営だ。1970年代の高度成長以降、政府の後押しもあり、財閥の力が増大。現在、韓国経済の大部分は財閥が握り、国内総生産の75%余りは10大財閥の売上高が占めている。