日本と東南アジア諸国連合(ASEAN)加盟10カ国による日ASEAN特別首脳会議の全体会議が14日午前、都内の迎賓館で始まった。安倍晋三首相は、世界経済の成長センターともいわれるASEANとのつながりを深めるため、今後5年間で総額2兆円規模の政府開発援助(ODA)を含む支援策を表明。中国が東シナ海上空に設定した防空識別圏を念頭に「公海上空の飛行の安全と自由」の重要性を訴える共同声明を採択する。
全体会議には、政情不安で副首相が代理出席したタイを除く9カ国の首脳が参加。首相は会議で「自由な飛行を基礎とする国際航空秩序に制限を加えようとする動きは強い懸念材料だ」と指摘し、中国の力による現状変更の動きを牽制(けんせい)するため、ASEAN側の理解を求めた。地域の安全保障環境が厳しさを増したとして、日ASEAN防衛相会合の開催も提案した。
特別首脳会議は、日本とASEANが昭和48年に初対話を開いて以来、今年で40周年を迎えたのを記念して行われ、東京開催は平成15年以来2回目。
首相は自らの経済政策「アベノミクス」に東南アジアの経済発展を活用するためにもASEAN外交を重視しており、今年1月から加盟10カ国を歴訪し、会議の準備を進めてきた。
ただ、中国が11月に尖閣諸島(沖縄県石垣市)を含む東シナ海上空に防空識別圏を設定したことで、特別首脳会議は中国牽制の色合いが濃くなった。首相は中国の「力による現状変更」の動きへの警戒感を共有し、共同声明に中国を意識した強いメッセージを盛り込みたい考えだ。
ASEAN内では、南シナ海で中国と領有権問題を抱えるフィリピンやベトナムと、中国と親密とされるラオスやカンボジアなどとの温度差もあり、日ASEAN全体の足並みがそろうかは不透明だ。
会議では、「防災強化パッケージ」として、河川改修や千人規模の防災専門家の育成などを行うため5年間で3000億円のODA供与を中長期ビジョンの一部に盛り込んだ。