中国国務院(内閣)の李克強首相は10月上旬、ブルネイで行われた中国と東南アジア諸国連合(ASEAN)の首脳会議で、両地域間の貿易額を2020年までに1兆ドル(約100兆円)にする目標を提起した。
現在約4000億ドルの貿易規模を7年間で1兆ドルまで引き上げるためには、中国とASEANの自由貿易協定(FTA)の強化が不可欠だ。李首相は同首脳会議でFTAのレベルアップ交渉を提案。双方が貿易や投資などの開放度を高め、さらなる自由化と利便性向上を実現していくというものだ。李首相はまた、ASEAN10カ国と中国を含めた計16カ国による東アジア地域包括的経済連携(RCEP)の交渉推進にも言及している。
中国ASEAN間のFTAが全面的に発効した2010年以降、貿易品目の約90%で関税が撤廃された。
だが、タイの政府系シンクタンク、タイ開発研究所(TDRI)によると、12年、タイが中国への輸出で見込まれた関税の減免額は2480億バーツ(約7840億円)のうち、実際に免除されたのは1180億バーツにとどまっている。
これについて日本貿易振興機構(JETRO)の担当者は「FTAの『原産地規則』が影響して、多くの製品が関税撤廃の対象外になる」と説明する。つまりASEAN諸国から中国に輸出する製品は、原産地がASEAN域内かどうかを判定され、そうでない場合は通常の関税が課せられるのだ。
日系メーカー製のプラズマテレビを例に挙げると、技術レベルの高い重要部品を日本で製造した後、タイやベトナムといった人件コストの低い国で組み立てを行い、中国市場に輸出する。この際、現在の「原産地規則」では組み立て国のタイは原産国とはみなされないという。