中間層増え「有望市場」 日本企業のASEAN進出加速

2013.12.13 20:57

ダイハツ工業のインドネシア第2工場が昨年末に稼働。生産規模は33万台から45万台に拡大した=西ジャワ州カラワン市

ダイハツ工業のインドネシア第2工場が昨年末に稼働。生産規模は33万台から45万台に拡大した=西ジャワ州カラワン市【拡大】

  • 有望な事業展開先の国

 東南アジア諸国連合(ASEAN)で、日本企業の進出が加速している。中間所得層の増加を背景に、消費が拡大する有望市場と位置付けられているためだ。長らく投資の種をまき続け、“果実”を得る段階の企業も多く、重要性はますます高まってきた。

 「日本とタイの経済的関係はさらなる拡大が期待される」。タイのニワットタムロン商業相は13日、東京・代官山で公開されたタイの物産展示館を訪れ、経済協力が今後も強まるとの認識を示した。展示された木製品などの工芸品についても、「日本のライフスタイルにも合いそう」と親和性を強調する。

 国際協力銀行が先月発表した年次調査によると、日本の製造業がみる今後3年程度の投資有望国・地域(複数回答)に、インドネシアが初めて首位に選ばれ、ブルネイを除くASEAN9カ国が20位以内に入った。人件費上昇や日中関係が不安視された中国は首位から4位に後退した。

 「ASEANは収益の屋台骨」。三菱自動車の益子修社長は先月、平成28年度までの中期経営計画の会見でこう強調した。主力のタイ、インドネシアに加え、フィリピンにも新工場を建設する見通しで、中計の最終年度は、約3割の販売をASEANでたたき出す計画だ。

 ASEAN全体の日本車シェアは80%と他国を圧倒している。「今後も主導権を握って展開できる市場」(ダイハツ幹部)と期待値は高い。ホンダも来年1月、インドネシアに第2工場を立ち上げ、生産能力を約3倍に増やす。トヨタ自動車も、ASEAN市場を重要市場に位置づける。

 複写機メーカーの富士ゼロックスもベトナムに新工場を建設、11月から稼働を始めた。同社は「ベトナムは産業化が進み、各国への輸送網も整っている」と説明する。

 小売りもASEANシフトを鮮明にする。衣料品のSPA(製造小売り)を進めるイトーヨーカ堂は、生産拠点をミャンマーやベトナムなどの新興国に移し、28年2月期には中国比率を現在の45%から3割に引き下げる。高島屋はシンガポールの事業子会社が好調、中間決算では27%の営業増益を確保した。

 日本通運は13日、タイの首都バンコクとマレーシアの首都クアラルンプール間(約1800キロ)で鉄道輸送サービスを18日から始めると発表した。まずは日系メーカーなどを対象に自動車部品を中心に定期運行を始める。

 ただ、日本貿易振興機構(ジェトロ)調査によると、賃金の高水準が続くタイやベトナムに加え、インドネシアやパキスタンなど6カ国の来年の賃金上昇率が、今年に続き2桁に上る見通し。人件費の抑制が経営上の最大課題になりつつある。

 ニコンがタイでのデジタルカメラ生産工程の一部を賃金の低いラオスに移管するなどのASEAN域内での最適地生産の見直しも始まった。成長持続に向け、ASEANは省力化投資などコストダウンの努力も迫られている。

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