昨年11月に野田佳彦首相(当時)が衆院解散を表明してから14日で1年。安倍晋三政権の経済政策「アベノミクス」で、大幅な円安株高が進行したが、足元では息切れ感もあり、政府や企業は正念場を迎えた。
「日本の閉塞感打破」
英系資産運用会社、フィデリティ投信は13日、アジアの金融機関の担当者約80人を東京に招き、日本株やアベノミクスの現状を踏まえた運用戦略について説明した。福田理弘インベストメント・ディレクターは「1、2年前なら東京に集まってもらうことは考えられなかった。香港などで開催され、日本株の話題が出ることもほとんどない状況だった」と振り返る。
デフレと少子高齢化によって消費が伸びず、超円高で外需も取り込めなかった日本。平均株価はリーマン・ショック後の2009年3月に7054円とバブル後最安値をつけた後、民主党政権下で低迷していた。
しかし、日本株を取り巻く状況は昨年11月14日を境に一変した。この1年間の平均株価の上昇率が68%に達するのに対して、今年、史上最高値を更新した米国、ドイツの株価指数はいずれも20%台。中国の上海総合指数は約2%だ。
牽引(けんいん)したのは、ヘッジファンドなど海外の機関投資家による“日本買い”。東京証券取引所によると、昨年11月中旬以降、今月初めまでの海外投資家による日本株の買い越し額は12兆7000億円を超える。
「バイ・マイ・アベノミクス(私の経済政策は買いだ)」。安倍首相は9月、ニューヨーク証券取引所での講演で投資家に呼びかけた。日銀の異次元緩和や成長戦略など「三本の矢」を繰り出すだけでなく、市場を重視した政策が米国などの金融緩和であふれた世界の投資資金を東京市場に呼び込んだ。フィデリティの福田氏はアベノミクスについて「前向きなビジョンを示し、日本の閉塞(へいそく)感を打破した」と評価する。
安倍相場による経営環境の改善は、日本経済を支える企業の業績回復につながった。SMBC日興証券によると、8日までに13年9月中間決算を開示した東証1部上場企業1082社の最終利益は前年同期の約2.3倍。電通の中本祥一副社長は13日、「足元の広告費支出はしっかりしており、景気には良い兆しだ」と強調した。
業績改善で企業が賃上げや設備投資に資金を回せば、本格的な景気回復、デフレ脱却が見えてくる。