確かに、黒田東彦総裁率いる日銀は「異次元の金融緩和」によって大量の国債を買い入れ、それとバランスさせる形で膨大なマネーを発行している。だが生み出されたマネーの大半は、市中銀行が日銀に開いている当座預金口座の中に積み上げられたまま。つまりマネタリーベースは増えているが、市場に出回るお金(マネーサプライ)はほとんど増えていないわけだ。
銀行は過分なリスクは取らないので、どんなに資金が増えても、貸し出しには慎重になる。対する企業側も、景気回復への確かな手応えが実感できなければ、おいそれと設備投資に踏み切ることはない。
3本目の矢だといわれる成長戦略は、そもそも見当違い。今の日本に必要なのは成長戦略ではない。資金の適宜な分配を目指す必要性が求められている。だが、成長戦略の中身自体も、安倍首相の“世界一になりたい”という願望が前面に出るばかりで、日本の経済活動が上手く回るように持って行こうというまともな問題意識は感じられない。