政府、米抜きTPP発効を検討 ガット参考に別途議定書案

 

 政府が、米国抜きでの環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)発効の方策検討に着手したことが31日、分かった。米国の離脱で発効が不可能になる中、世界貿易機関(WTO)の前身「関税貿易一般協定」(GATT、ガット)を参考に、別途議定書を結び、合意した国にのみTPPを適用する案も浮上している。5月にベトナムで開く閣僚会合の共同声明には有志国だけでの発効方針を記すことも視野に、参加国と調整を進める。

 参考の選択肢に上がるガットは、第二次世界大戦後、西側諸国を中心に結んだ多国間で自由貿易を拡大するための協定。

 1947年10月、米英など23カ国が署名したが、発効要件の「締約国の貿易額の85%を占める国の受諾」が満たされず、正式発効しなかった。このため8カ国が48年1月、「暫定適用議定書」を締結。これに合意する国のみにガットを適用する形でスタートした。

 TPPも、発効には国内総生産(GDP)の合計が参加全12カ国の85%以上を占める、6カ国以上の批准が必要。発効は、GDPの6割を占めるトランプ米政権が離脱を表明したため、不可能となっている。

 発効要件変更には参加国の再交渉が必要で難航が予想される。ただ、ガットと同じく、希望国のみにTPPを適用する議定書を結べば、実質的な米国抜きのTPP発効が、より容易に実現できるとみられる。

 トランプ米政権が2国間の通商交渉を求める姿勢を強める中、国内外では米国抜きでのTPP発効を急ぐよう求める声が高まっている。海外では豪州やニュージーランドが前向き。国内でも自民党から、まずTPPを11カ国で発効し、最終的に米国に加入を促すよう求める意見が出ている。

 ベトナムでのアジア太平洋経済協力会議(APEC)貿易担当相会合にあわせて開かれるTPP閣僚会合には、石原伸晃担当相が出席する方向。米国抜きの選択肢を排除せず、TPPの将来像提示にリーダーシップを発揮したい考えだ。