(下)ホテル業界、助成拡充など要望も今後の方向性示されず
受動喫煙防止の波紋「理解に向けての周知徹底をやってほしい」。こう話すのは、受動喫煙防止の強化策に条件付き賛成の立場を表明する日本ホテル協会の幹部だ。厚生労働省を中心とした「受動喫煙防止対策強化検討チームワーキンググループ」はこれまで、同協会など関連団体に2回のヒアリングを実施したが、今後については「現在、検討を続けている」(厚労省健康課)として、明確な方向性は示していない。同協会幹部が求める一般への周知もこれからだ。ヒアリングに出席した団体からは「内容を事前に示して意見を聞いてほしい」という要望もあり、法制化に向けてはまだ紆余(うよ)曲折が予想される。
一般へ周知徹底を
同協会はヒアリングで、(1)十分な周知期間の設置(2)公的助成の拡充(3)喫煙所設置の技術基準を変更、強化しない-という3点を要望した。ホテル客の中には喫煙者もいることから「受動喫煙防止については今までも健康増進法などに沿って努力義務としてやってきた。これを五輪の開催国並みにやっていくためにも一般への周知徹底をやってほしい」と訴えた。
また、各ホテルは昨年5月の厚労省の通達に従って喫煙室などを整備しているが、「今回のヒアリングでは喫煙室要件が明示されていなかった。現在の技術的基準が変更、あるいは強化されるのは困る」(同協会幹部)。喫煙室の設置についても、資本金5000万円以下で従業員100人以下のホテルに対して200万円を上限に設置費用の2分の1を助成するとしているが、「規制を強化するのであれば、助成の拡充を図りすべての事業者に適用してほしい」と要望した。
「日本型」の可能性
ヒアリングではこのほか、従業員の受動喫煙も俎上(そじょう)にのぼった。宴会場での受動喫煙が問題視されたホテル業界は「20室以下が4割という状況で、新たに喫煙室を設置するというのは困難だ」(同ホテル協会)と説明。傘下従業員を約700万人抱える全国生活衛生同業組合中央会は「経営者と従業員が話し合ってどういう環境をつくっていくか真剣に取り組んでいく。今後、十分な周知期間を設け、いろんな形で意見を聞く時間を与えてほしい」と話した。
今回のヒアリングを受けて同中央会は「制度化にあたっては、内容を事前に示して意見を聞いてほしい。ヒアリングで意見を聞いた以上、もう少し相談してほしい」と話す一方で、受動喫煙防止の一つの方法として「日本型の完全分煙」を提案する。
同中央会の伊東明彦事務局長は「日本の技術をもってすれば、小規模店でも導入できる分煙設備をつくることはできるはずだ」とし、「東京五輪・パラリンピックは日本が“分煙先進国”として売り出すチャンスでもある」と強調する。日本の英知を結集すれば、受動喫煙防止の強化策でも完全禁煙以外のすぐれた独自対策を講じることも考えられそうだ。
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