与党税調、配偶者控除など本格議論 年収1120万円超の高所得世帯は逆に増税も
自民、公明両党は21日、それぞれ税制調査会の総会を開き、2017年度税制改正に向けた議論を本格化した。焦点となる所得税の配偶者控除の見直しでは、パート主婦らの給与年収要件を現行の103万円以下から引き上げる一方、税収減を避けるため、控除を受ける夫の年収が1120万円超の高所得世帯は制限を設ける方向で調整する。見直しは女性の就労を促進するのが狙いだが、効果が限定的になる可能性があるほか、一部世帯には増税となるため力強さを欠く個人消費に冷や水を浴びせる懸念もある。
自民党の宮沢洋一税調会長はこの日の総会で、「女性に103万円といった壁が意識されていることは事実で、喫緊の課題として取り上げなければならない」と述べた。
配偶者控除は妻の年収が103万円以下であれば、夫の所得から38万円を差し引く仕組み。減税の恩恵を受けるために、年収103万円以下になるよう労働時間を抑えるパート主婦らが多いと指摘される。
政府・与党は、まず配偶者の年収要件を150万円以下か130万円以下に緩和する2案で検討し、主婦らが今よりも長く働けるようにする。
ただ、社会保険料負担が発生し、手取り収入が減る「130万円(要件次第で106万円)の壁」なども女性の就労抑制の原因とされているため、減税の対象を広げるだけで、実際に就労が拡大するかは未知数だ。
控除の対象もパート主婦らの世帯に限られるため、フルタイムの共働き世帯には不公平感も残る。
一方、財務省や与党税調は財政規律の観点から、税収が減らない形の見直し(税収中立)を前提としており、控除を受けられる夫の年収に制限を設ける方針。妻の年収要件を150万円以下に緩和した場合、夫の年収が1120万円超、130万円以下なら夫が1320万円超の世帯の控除は制限する案を検討しており、パート主婦らがいる高所得世帯は逆に増税となる。
企業では配偶者手当の廃止や縮小が検討されている。景気回復の足取りが弱い中、結果的に家庭の負担が増すことになれば、個人消費が腰折れし、安倍晋三政権の経済政策「アベノミクス」の足かせになる恐れもある。
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