トランプ氏勝利から1週間で市場激変 長期金利が一時0・035%に急騰 円安・株高も続く

 
トランプ氏とメラニア夫人(左)=10日 (AP)

 米大統領選でドナルド・トランプ氏が勝利してから1週間が過ぎた。米長期金利の急上昇などを背景に日本の長期金利は急速に水準を切り上げ、16日に一時、前日終値比0・035%高い0・035%に上昇し、約9カ月ぶりの高水準となった。一方、円相場や日本株相場はトランプ氏が掲げる経済政策への期待から円安・株高が続いている。

 トランプ氏は減税やインフラ投資を掲げており、米景気が回復して物価が上昇するとの思惑から、米大統領選の開票前は1・8%台だった米長期金利は14日に一時2・3%台に急上昇した。これにつられてドイツ、イギリスなど他の主要国の長期金利も高水準で推移している。

 日本の長期金利の指標となる新発10年物国債の利回りは15日に約2カ月ぶりにマイナス圏を脱し、16日も一段と上昇した。米大統領選後に円安ドル高が進み、日銀の追加金融緩和観測が後退していることも長期金利の上昇を誘っている。

 日銀は新たな金融緩和の枠組みで、長期金利をゼロ%程度に誘導するとした。SMBC日興証券の竹山聡一金利ストラテジストは「この先も長期金利がじりじりと上昇すれば日銀は国債買い入れの増額で長期金利の上昇を抑え、もし急上昇が起きれば日銀が指定する利回りで国債を買い入れる『指し値オペ』もあり得る」と指摘。長期金利は当面、マイナス0・05~0・05%で推移するとみる。

 長期金利が上昇すれば、マイナス金利で悪化した金融機関の収益改善につながる。個人も運用の幅が広がる半面、住宅ローンなどの負担が増える懸念もある。

 一方、円相場は予想外のトランプ氏勝利で9日に一時1ドル=101円19銭まで急騰したが、その後は米長期金利の急上昇を背景にドル買い円売りが加速。16日の東京市場では一時1ドル=109円50銭をつけ、節目の1ドル=110円が見えてきた。この1週間で8円超も円安ドル高が進んだ。

 日経平均株価も9日に前日比919円84銭安と急落したが、同日の米国株が大幅高となったことで潮目が変わり、10日以降はほぼ一貫して上昇。円安ドル高も追い風となり、16日の終値は前日比194円06銭高の1万7862円21銭と、1月6日以来の1万8千円台を射程に捉えている。

 ただ、円安・株高が急ピッチで進んだため、短期的な過熱感も生じている。また、ドル高基調が続けば米製造業の輸出や収益、雇用には逆風となるため、トランプ氏や周辺から牽制発言が出る可能性もある。そうなれば一転して円高ドル安に転じ、平均株価が下押しされかねない。(森田晶宏)