配偶者控除の抜本見直し断念…“解散風”で小粒感否めず 来年度税制改正、自民税調が議論開始
自民党税制調査会は18日に開催した非公式幹部会(インナー)で、2017年度税制改正に向けた議論を開始し、12月8日にも税制改正大綱を決定することを決めた。配偶者控除を夫婦控除へ転換する抜本的な見直しは、官邸や公明党の慎重姿勢を受けて断念。代わりに配偶者控除の対象拡大やビール類の酒税の一本化などを協議するが、衆院解散・総選挙が取り沙汰される中、世論の反発を意識し、税制改正自体が小粒になる恐れが強まっている。
この日の幹部会では若手を含め幅広い議員向けに来週から週1回ペースで勉強会を開くなど、年末に向けた段取りなどを確認した。
主要テーマの配偶者控除の見直しは今後、適用を受ける妻の年収要件を103万円から150万円以下に引き上げる案などを検討する見通しだ。対象世帯が増える分、適用を受ける夫の所得に制限を設けるなどの財源確保策が焦点になる。
幹部会後、宮沢洋一会長は「税調のプロセスはプロセスとして淡々と進めて行く」と述べ、“解散風”が議論に与える影響を否定した。
とはいえ、宮沢会長は8月下旬に「所得税の久しぶりの大改正を考えている」と表明。自民税調として、配偶者控除などの抜本改革を行う青写真を描いていた。だが、見直しの有力案とした夫婦控除は、夫婦であれば妻の働き方を問わずに控除が受けられる仕組みで対象が増えて大幅に減収になる。税収を維持するには中間所得以上の世帯が控除を受けられなくなる可能性もあった。
このため、公明党が支持層の専業主婦世帯に不安が広がりかねないと懸念。来年1月の衆院解散を選択肢に見据える官邸にも慎重論が強く、夫婦控除の構想は腰砕けになった格好だ。
17年度税制改正では、麦芽比率などで異なるビール類の酒税一本化に踏み切れるかも課題となる。だが、ビールが減税になる一方、発泡酒や第3のビールが増税になり、有権者に反発を招く可能性もある。
ここ数年、自民税調は軽減税率導入などをめぐって官邸や公明党に押し込まれ、存在感が低下している。安倍晋三首相の“盟友”で新たにインナーに加入した甘利明前経済再生担当相はこの日の幹部会後、「政府と党が良い方向で一致していくようにつなぎ役をやっていく」と述べた。
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■2017年度税制改正議論の主な項目
≪配偶者控除≫
・年収要件を103万円以下から引き上げ
・世帯主が高所得な世帯を対象から外すなどの財源確保策
≪酒税≫
・ビール類の税額を数年かけて一本化
≪少額投資非課税制度(NISA)≫
・年間投資上限60万円、非課税期間20年の長期積立枠の創設
≪法人税≫
・企業の研究開発に対する減税の対象をビッグデータを活用したサービスなどにも拡大
・賃上げした中堅、中小企業の法人税減税を拡大
≪相続税≫
・保育所として貸し出されている敷地を相続後も貸与を続ければ非課税
≪車体課税≫
・来年度末で期限が切れるエコカー減税の延長、燃費基準の厳格化
≪国際課税≫
・多国籍企業によるタックスヘイブン(租税回避地)を使った課税逃れの対策を強化
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