小学校で超プログラマー育成 「顕著な才能」伸ばし日本のIT人材強化
政府が“スーパープログラマー”の育成に乗り出す。小学校で必修化の方針が固まり、中学・高校でも授業を拡充する方向になったプログラミング教育で「顕著な才能を示す児童・生徒」の能力を伸ばすための指導法について総務省が課外指導向けの手引書にまとめる。プログラミング教育の本格実施の際には、教室や講座の開設が集中する都市部と、地方との地域間格差が問題になることから、官民で解消への取り組みも始まった。ビッグデータや人工知能(AI)などの新技術をめぐる世界的な競争を視野に、日本のIT人材育成強化につなげたい考えだ。
20年度に必修化
コンピューターの動かし方を学ぶプログラミング教育。高市早苗総務相は23日、その実証授業を行っている小金井市立前原小学校(東京)を視察した。3年生の授業では、児童がタブレット端末を使い、描いた絵を動かす簡単なプログラムをつくった。「(児童が)タブレットを使いこなしていて頼もしく感じた。楽しみながら取り組むことが大事だ」と話した。
プログラミング教育については、小中学校・高校を対象にした普及推進事業として、7月から石川県加賀市や北九州市などの全国24校で実証授業が行われており、前原小もその一つ。2017年度も、新たに公募して同程度の数の学校で実証する。プログラミング教育は、小学校で必修化する20年度をめどに一般的になる見通しだ。
総務省幹部は「裾野を広げると同時に、頂点を高めることも重要だ」と指摘する。卓越した能力が認められ、意欲もある児童・生徒については基礎的な教育にとどめず、課外活動などでスーパープログラマーとしての才能を伸ばす方針だ。
短期間にそれぞれの学校でノウハウを蓄積するのは困難なため、手引書を作成する方針。大学や高等専門学校、企業などを対象に複数の事業者を来春から選定し、来年7月ごろから、スマートフォンのアプリ開発などで実績のある人たちがどのように能力を身につけたかを調べるほか、実際に児童・生徒に教育しながら最適な指導法や教材について分析する。最終的には官民の有識者でつくる会議で評価し、手引書を作成する。
一方で、障害者の児童・生徒への指導法についても同時期に事業者を公募し、学習に必要な機器の開発を進める。例えば、視覚障害者についてはプログラミングでつくった図形を3Dプリンターで造形物にし、触って確認できるようにすることなどが考えられる。
地方波及に課題
課題は地域間格差。プログラミング教育を課外で学べる場所は首都圏などに集中しているからだ。高市総務相は23日の視察後、「実証モデルによるノウハウを、教員の方に伝えていくことが重要だ」と述べた。総務省は、来年7月ごろから地方での出前講座を本格化する方針。タブレットや無線通信用のルーターなどをキャラバン車に詰め込んで全国をまわる。この中で、実証授業の教員が先行事例で得た知見を伝えることも検討する。
民間企業による独自の取り組みも進んでいる。中学・高校生向けにプログラミング教育を行うベンチャー企業のライフイズテック(東京)は、ネットで学べるサイト「MOZER(マザー)」を6月に立ち上げた。登場するキャラクターの悩みを聞きながらホームページ作成を学べる無料体験版も提供する。同社はプログラミングの教室を運営しているが都市部が中心で、「地域格差の解決のためにオンラインで学べる状況をつくった」(水野雄介最高経営責任者)という。(高橋寛次)
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