社会保障充実が争点に 各党公約、消費増税延期でもバラマキ
2016参院選消費税増税の再延期が決まり、増税時に予定されていた社会保障の充実策の扱いが7月の参院選の争点に浮上している。15日出そろった主要政党の公約では、自民党が子育て支援の先行実施を打ち出したのに対し、民進党は低年金の高齢者対策なども含めて行うとした。各党とも票目当てのバラマキ政策ではなく、安定的な社会保障制度への道筋を示すことが求められる。(田村龍彦)
平成24年に自民、公明、民主(現民進)3党が合意した「社会保障と税の一体改革」では、消費税率8%から10%への引き上げ時に増える税収の1.5兆円分は充実策に使うことになっていた。
具体的には、50万人分の保育の受け皿を確保する保育所運営費支援(費用1千億円)▽低所得の高齢者支援で最大年6万円の給付金を支給(同5600億円)▽年金受給に必要な資格期間を25年から10年に短縮(同300億円)▽低所得者の介護保険料の軽減(同1200億円)-などがあった。
この日、参院選公約を発表した民進党の長妻昭代表代行は、これらの充実策について「消費増税と同時ではなく(先に)やる」と強調。行財政改革などで財源を捻出し、不足した場合に国債発行で賄うとした。
ただ、民主党政権時代には「埋蔵金」の活用などで捻出するとした財源が想定通り確保できなかったことなどもあり、実現は簡単ではない。
一方、安倍晋三首相は1日の会見で、増税を再延期するものの、保育の受け皿確保は実施する考えを表明した。その他の充実策について、自民党の公約は「赤字国債に頼らず安定財源を確保して可能な限り行う」と強調。参院選後に優先順位を検討する方針だ。
BNPパリバ証券の河野龍太郎チーフエコノミストは「そもそも日本の社会保障制度は費用を収入で賄えておらず、充実策でさらに費用を増やしていいのか疑問だ」と指摘する。
高齢者への給付金支給などはすでに関連法案が成立し、ゼロからの見直しは難しい。ただ、財源のあてがないまま、充実策の先行実施にこだわれば、将来にツケを回さない社会保障制度と安定財源の確保を目指した一体改革の趣旨を逸脱するとの批判は根強い。
年金政策などは選挙で高齢者らの支持を得られやすいとはいえ、増税の再延期で財政健全化の道のりが険しくなる中、各党とも長期的視点や世代間の公平に立った政策が欠かせない。(田村龍彦)
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