円高リスク再燃懸念 米利上げ観測後退でドル売りパニック 105円台突入も

 

 3日のニューヨーク外国為替市場で円相場が一時1ドル=106円台半ばまで急伸した。最近は米国の追加利上げ期待からドルが買われ円安傾向で推移していたが、同日発表された米国の5月の雇用統計が想定外に悪かったことから、早期追加利上げ観測が大きく後退し、大あわてで円買いドル売りが進んだ。週明け6日(日本時間7日未明)には米連邦準備制度理事会(FRB)のイエレン議長の講演が予定されており、その発言内容によっては日本経済に打撃となる円高リスクが再燃する懸念がある。

 円相場は5月3日の海外市場で、日銀の追加金融緩和の見送りなどから今年の最高値である一時1ドル=105円55銭を付け、平成26年10月以来1年半ぶりの円高水準まで上昇した。しかし、その後は、米国の景気回復を背景とした早期追加利上げ観測を受け、利回り上昇を期待したドル買いで円安が進み、5月30日には一時1ドル=111円台半ばまで下落していた。

 ところが、5月の雇用統計で景気のバロメーターである非農業部門の就業者数の増加ペースが急減速し市場に驚きが広がり、円相場は前日の1ドル=108円台から一気に2円以上も円高が進んだ。ニッセイ基礎研究所の上野剛志シニアエコノミストは「米国が段階的に利上げを行うことが円安の条件。だが、雇用統計があまりにも低調な内容で追加利上げはしばらくないとの見方から、円が買われた」と指摘する。

 市場関係者が注目するのは、6日のイエレン議長の講演だ。5月27日の講演では追加利上げについて「数カ月以内に適切になるだろう」と述べていた。利上げに踏み切る上で重視していた雇用の改善に急ブレーキがかかったことで軌道修正するかが焦点。上野氏は「発言がトーンダウンすれば、さらに円買いドル売りが進み、1ドル=105円台を目指す動きになる」とみる。

 円高は日本の輸出企業の採算悪化につながり、株価にも逆風となる。主要企業は今期の想定為替レートを1ドル=110円前後に設定しているところが多く、足元の水準はこれよりも円高に振れている。大和証券の石黒英之シニアストラテジストは、今年の最高値の1ドル=105円55銭を防衛できるかが注目点になると指摘。「これを突破して最高値を更新すれば、日経平均株価が1万6千円を割り込む可能性もある」と予測する。平均株価は3日終値が1万6642円23銭だった。

 今月は米国や日本で金融政策を決める会合が中旬に相次ぐほか、23日には英国の欧州連合(EU)離脱の是非を問う国民投票を控えており、金融市場を大きく動かすイベントがめじろ押しで、予断を許さない状況が続きそうだ。