豪次期潜水艦、日本は受注先に選ばれるのか…中国は「日本は敗戦国」と牽制
【シンガポール=吉村英輝】オーストラリアのターンブル首相は5日までに、日本、ドイツ、フランスが受注を争う次期潜水艦の共同開発相手について、選定を「間近だ」としながら、決定時期は解散総選挙の行方に「左右される」との考えを示した。開発に慎重な野党を牽制した形だが、中国が南シナ海への進出圧力を強めるなか、有力視される日本の潜水艦選定が、豪政局の“荒波”に翻弄される事態も懸念される。
豪政府は今年2月にまとめた国防白書で、「台頭する中国は地域でさらなる影響力拡大を模索する」と指摘し、次期潜水艦を12隻調達する正式計画を示した。建造費500億豪ドル(約4兆円)超と豪史上最大の防衛装備品調達となる。
ターンブル氏は、3日放送の豪ニュース番組スカイニュースに出演。最大野党の労働党が2013年まで率いた政権を、国内で艦船を建造せず「海軍が無視された」とあてこすったが、潜水艦選定時期を問われ「選挙次第だ」とした。選挙前に潜水艦問題で労働党に揚げ足をとられまいとする思惑もありそうだ。
造船企業が集積する南部アデレードでは2日、造船業労働者100人以上が「雇用維持の約束を」とデモ行進し、労働党も同調して政権批判を強めた。
ターンブル氏は先月、建設関連の労働組合を監督する機関を設置する法案を提出するとし、今月18日の議会招集を発表。法案が去年に続き上院で再度否決されれば、首相は上下両院を解散できる。総選挙の7月前倒し実施をちらつかせ、議会を揺さぶった格好だ。
ターンブル氏は昨年9月、アボット首相(当時)への反発が広がった与党自由党の党首選で、アボット氏に勝利し、高い支持率を得た。だが、税制改正などをめぐり野党の攻勢が強まるなか、ダブル選に打って出て政権基盤の強化を模索する構えとみられる。
豪政府の潜水艦選定をめぐっては、親日派とされたアボット氏や米国が日本の「そうりゅう」型を支持し、本命視されてきた。だが、独仏が豪州国内建造比率引き上げでアピールし、巻き返しを図っている。
一方、最大の貿易相手国である中国の王毅外相は2月、豪州側に「日本は第二次大戦の敗戦国で、戦後の武器輸出は日本の平和憲法や法律の厳しい制約を受けている」と牽制した。
日本側は、豪海軍との機密共有や地元労働者訓練などでアピールするが、「冷徹な合理主義者」(地元メディア)とされるターンブル氏の政治手腕が、潜水艦選定に影響を与えそうだ。
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