政府、訪日外国人目標を一気に倍増 2020年=4000万人、2030年=6000万人

 
明日の日本を支える観光ビジョン構想会議を終え、報道陣に説明する石井啓一国交相=30日午後、首相官邸(斎藤良雄撮影)

 政府は30日、訪日外国人観光客の拡大に向けた具体策をまとめる「明日の日本を支える観光ビジョン構想会議」(議長・安倍晋三首相)を開き、訪日外国人観光客数の目標人数を倍増させ、平成32(2020)年に4千万人、42(2030)年に6千万人とすることを決めた。首相が掲げる名目国内総生産(GDP)600兆円の達成に向け、観光施策をその起爆剤にしたい考えだ。

 訪日外国人観光客数は昨年、1974万人に達しており、32年目標の2千万人の前倒し達成は確実な情勢だった。首相は会議で「観光は成長戦略の大きな柱の一つであり、地方創生の切り札だ。世界が訪れたくなる日本を目指し、観光先進国という新たな高みを実現していく」と述べた。

 新たな目標人数達成に向けた施策として、政府が重視する20カ国・地域のうち現在もビザが必要な中国、フィリピン、ベトナム、インド、ロシアの5カ国の発給条件緩和を加速させる。全国200カ所の文化財を対象に修繕や多言語解説の導入などを支援し、保全重視から観光活用へ転換を促す。大型国際会議の誘致や観光の人材育成なども進め、訪日外国人の旅行消費額を現在の3兆5千億円から32年に8兆円、42年に15兆円を目指す。

 政府が外国人観光客の目標人数を大幅に引き上げたのは、観光産業を「GDP600兆円に向けた成長エンジン」(首相)と位置付けているからだ。首相が掲げる新三本の矢「名目GDP600兆円」「希望出生率1.8」「介護離職ゼロ」のうち、子育て支援や高齢化対策などの社会保障制度改革は政策効果が出るまでに一定の時間がかかる。一方、観光はインフラ整備からサービス業まで裾野が広く、景気回復へ即効性が期待できる。

 日本経済は長年、高い技術力を背景に製造業が牽引(けんいん)してきたが、近年は新興国の攻勢にさらされている。他方、日本は「気候」「自然」「文化」「食」という観光先進国の4条件がそろっている。政府は観光産業のてこ入れで、円高株安の打撃を受けにくい筋肉質の経済への転換を図る。