日航の定時運航と空の安全を支えるグランドハンドリング 空港で活躍する特殊車両も紹介 (3/4ページ)

  • トーイングカーの運転席に収まる酒井さん。一般的な乗り物よりもはるかに視点が高い
  • 航空機の前輪にトーバーを取り付けて、プッシュバックの準備をする酒井さん
  • 作業中に笑顔を見せる酒井さん。この日の気温は35度近くあった
  • 隣同士のスポットから同時にプッシュバックされる2機のボーイング。まったく同じタイミングは珍しいそうだ。手前のトーイングカーを操縦するのは酒井さん
  • 隣同士のスポットから同時にプッシュバックされる2機のボーイング。まったく同じタイミングは珍しいそうだ
  • 隣同士のスポットから同時にプッシュバックされる2機のボーイング。まったく同じタイミングは珍しいそうだ
  • プッシュバックをするトーイングカー。機材の方が圧倒的に大きい。操縦するのは酒井さん。
  • プッシュバックを終えて片付けをする酒井さんの横を、滑走路に向けて走り出した鹿児島行の航空機
  • プッシュバックを終え、トーバーを取り外してトーイングカーの中に格納する酒井さん
  • プッシュバックを終えて駐機場に戻ってくる酒井さん
  • トーイングカーを運転する酒井さん
  • 大型特殊車両は運転席によじ登るだけでも一苦労
  • 航空機とトーイングカーをつなぐトーバー
  • ハイリフトローダーを到着便に寄せるグランドスタッフ。これからコンテナの搭降載を行う
  • コンテナはハイリフトローダーによって降ろされていく
  • ハイリフトローダーからコンテナドーリー(荷台)に取り降ろされた貨物
  • トーイングトラクターに連結されたコンテナドーリー(荷台)の上に貨物を並べていく酒井さん。重いものは1トンにも達するそうだ
  • トーイングトラクターでコンテナを運ぶ酒井さん
  • 機内食を積んだフードローダー
  • ハイリフトローダーによる貨物の取り降ろしと積み込み、フードローダーによる機内食の積み込みなど一度に様々な作業が行われている
  • 地中から蛇腹状のホースを取り出す酒井さん。これは外部エアコンを供給するためのエアーダクト。駐機中にエンジンを切っているとエアコンが使えないため、地上施設から冷気を送って機内温度を調整する(温風も送風可能)
  • 隣のスポットでもプッシュバックが行われていた
  • トーイングカーのインパネ。様々な計器類がある
  • 前輪付近で電源コネクタを差し込むスタッフ。これは地上から電源を供給するための作業。これにより駐機中は航空機のエンジンを作動しなくても機内の照明や電子機器などが使えるようになる
  • 給油車を使って翼の下から燃料を供給する
  • 搭乗が遅れた乗客の手荷物をベルトローダーで積み込むグランドスタッフ
  • JALグランドサービスの酒井ゆりさんと、“相棒”のトーイングカー
  • 貨物列車のように、連結した荷台にコンテナを積んで走るトーイングトラクター。飛行場でヘビのように走っているあのクルマだ
  • 手荷物を運ぶトーイングトラクター。車両の後ろにコンテナドーリーと呼ばれる荷台を連結してヘビのように走らせる
  • トーイングトラクターのインパネ。このトーイングカーはトヨタ製だった
  • トーイングトラクターはオートマ。ハンドル、アクセル、ブレーキとギアがあり、運転感覚は自動車と似ているそうだ
  • 大型機をけん引/プッシュバックするトーバーレストラクター。航空機の前輪をこの車両で抱え込んで行う
  • これはトーバーレストラクターという牽引車。航空機につなぐトーバーがない代わりに、機材の前輪をこの車両が抱え込んでトーイングやプッシュバックを行う
  • トーバーレストラクターの運転席。ハンドルが前後にあるため、シートの向きを変えるだけで牽引とプッシュバックが簡単にできる
  • トーバーレストラクターの運転席
  • JALグランドサービスの酒井ゆりさん。羽田空港で航空機の安全な運行を支えている


 到着便の横で彼らの仕事ぶりを眺めていたのだが、機材周辺では様々な特殊車両が往来し、想像以上にせわしない。グランドスタッフは機材にボーディングブリッジを取り付けて乗客を空港内に誘導し、パイロットが機内の最終チェックを行う。機外では機体側面のハッチが開き、ハイリフトローダーに載せられたコンテナを地上に降ろす。これら大型貨物はトーイングトラクターに連結されたコンテナドーリー(荷台)の上で方向転換させ、貨物列車のように奥から次々と並べられていく。コンテナは重いもので1トンにも達するそうだが、もちろん華奢にみえる酒井さんも巨大な箱を一人で動かして荷台に積載し、準備を終えるとトーイングトラクターを自ら運転して所定の場所まで運んでいく。乗客の手荷物はベルトローダーと呼ばれるコンベヤー付きの車両で一つひとつ丁寧に降ろされる。

 その間にも大きな翼の下では給油車のホースから燃料の補給が行われ、フードローダーで運ばれてきた機内食がどんどんと積み込まれていく。ふとボーディングブリッジを見上げると、すでに乗客が搭乗を開始している。先ほど手荷物やコンテナを降ろしたばかりと思っていたら、実は積み込みも続けて行われているのだ。やがてすべての作業が迅速に完了すると、再び酒井さんがトーイングカーに乗り込み、仲間の合図とともに機材のプッシュバックを始めた。動き出すときは「機内に衝撃がいかないようにアクセルをゆっくり入れることを心がけています」と丁寧な操縦を意識しているそうだ。確かにこのペースならプッシュバックは30分に1本の計算となる。一つの便が到着してから再び出発するまで時間は限られている。これまでに何度もニュースになっているが、日本航空は毎年のように世界でもトップクラスの「定時到着率」を誇っている。この名誉は、酒井さんらグランドスタッフによる正確かつ迅速な作業によって日々のスムーズな運航が実現しており、乗客を目的地まで安全・快適に送り届けるエキスパートの妙技を間近で確認することができた。

グランドスタッフを志したきっかけ