到着便の横で彼らの仕事ぶりを眺めていたのだが、機材周辺では様々な特殊車両が往来し、想像以上にせわしない。グランドスタッフは機材にボーディングブリッジを取り付けて乗客を空港内に誘導し、パイロットが機内の最終チェックを行う。機外では機体側面のハッチが開き、ハイリフトローダーに載せられたコンテナを地上に降ろす。これら大型貨物はトーイングトラクターに連結されたコンテナドーリー(荷台)の上で方向転換させ、貨物列車のように奥から次々と並べられていく。コンテナは重いもので1トンにも達するそうだが、もちろん華奢にみえる酒井さんも巨大な箱を一人で動かして荷台に積載し、準備を終えるとトーイングトラクターを自ら運転して所定の場所まで運んでいく。乗客の手荷物はベルトローダーと呼ばれるコンベヤー付きの車両で一つひとつ丁寧に降ろされる。
その間にも大きな翼の下では給油車のホースから燃料の補給が行われ、フードローダーで運ばれてきた機内食がどんどんと積み込まれていく。ふとボーディングブリッジを見上げると、すでに乗客が搭乗を開始している。先ほど手荷物やコンテナを降ろしたばかりと思っていたら、実は積み込みも続けて行われているのだ。やがてすべての作業が迅速に完了すると、再び酒井さんがトーイングカーに乗り込み、仲間の合図とともに機材のプッシュバックを始めた。動き出すときは「機内に衝撃がいかないようにアクセルをゆっくり入れることを心がけています」と丁寧な操縦を意識しているそうだ。確かにこのペースならプッシュバックは30分に1本の計算となる。一つの便が到着してから再び出発するまで時間は限られている。これまでに何度もニュースになっているが、日本航空は毎年のように世界でもトップクラスの「定時到着率」を誇っている。この名誉は、酒井さんらグランドスタッフによる正確かつ迅速な作業によって日々のスムーズな運航が実現しており、乗客を目的地まで安全・快適に送り届けるエキスパートの妙技を間近で確認することができた。