上海ディズニーはいま 家族で割り込み、偽入場券、驚くほどおいしくないランチ

 
6月16日の正式開園を控えた試験営業中の上海ディズニーランド場内で入場者を楽しませるドナルドとデイジー(5月24日、入場者提供)

 中国の上海市郊外で「上海ディズニーリゾート」が16日に正式オープンするまで、9日で1週間と迫った。しかし5月からの「ディズニーランド」エリアでの試験営業でアトラクションの故障が相次いだほか、入場者の割り込みトラブルなどが頻発しており、アジアで日本と香港に次ぎ3カ所目、中国本土で初めての「夢と魔法の国」は波乱含みだ。(上海 河崎真澄)

 地元紙記者によると、5月7日からの試験営業で9日までに130万人以上が来場した。1日平均は約4万人。一方、正式開園後は年1500万人の入場が見込まれ、ピーク時は1日10万人前後が押し寄せる。

 だが、5月に入場した関係者によると、人気アトラクションには長い列ができて2時間待ち、3時間待ちが常態化。並んだ末、「機械故障で今日はもう乗れない」と係員に一方的に言われ、入場者が詰め寄る騒ぎが何度も起きたという。

 入場者の列でも、係員のチェックの目を盗んで小さな子供をドンドン先に行かせ、親が子供を追いかけるフリをして結局、家族そろって割り込むなど悪質な例が頻発。雨の日にトイレでハンドドライヤーにぬれた足を無理やり入れ、乾かしていた女性が目撃されるなど、正式開園後が思いやられる事態となっている。

 往来する入場者で大混雑している狭い通路でも、複数のベビーカーをドンと止めて、自分たちは人気キャラクターの絵をバックに長時間、記念写真撮影に興じる家族連れ。その脇で混雑する人の流れに逆らいながら、折りたたみのイスに座って休む高齢者もいた。

 こうした問題について地元紙記者は、「人に迷惑をかけてはいけない、という日本人のような発想は中国では薄く、割り込みや通路をふさいだりする行為は中国ではどこでも普通にあること。ディズニーランド内だから特に指摘されるのかもしれないが、入場者の99%は中国人どうしで問題はない」と弁明している。

 加えて、平日で1人370元(約6200円)、週末などは499元の入場券が、ネットで10倍前後の高値で転売され、並ばずに特定のアトラクションに乗れるファストパスまで250元で転売されるなど“ダフ屋”が横行。ニセ入場券でトラブルも起きている。

 場内の食事も今後、問題になりそうだ。中国式建築がひときわめだつ高級レストラン「漫月軒」は最低でも1人数百元(数千円)からと、一般の家族連れにはつらい価格設定になる。

 カジュアルなレストランで関係者が試してみたランチでは、1時間近く並んで出されたミッキー型のプレートに乱雑に乗せられたごはんやおかず、適当に切っただけの果物と小さな飲み物のセットで60元(約1000円)と割高。「しかも驚くほどおいしくない」と関係者は顔をしかめた。

 場外戦も起きそうな予感だ。中国式テーマパークを各地で運営する不動産大手の会長はテレビ取材に「55億ドル(約5900億円)も投資した上海ディズニーは10年から20年は利益など出ない」と断言。ライバル心をむき出しにしている。