「中国刺激」オスプレイに懐疑的論調はいかがなものか 被災者支援に活躍望む
【熊本地震とオスプレイ 九州総局長が読む】
熊本地震で18日、米海兵隊の垂直離着陸輸送機MV22オスプレイが被災地に投入された。日ごろの訓練と実戦経験を生かし、日米共同で被災者支援に大いに活躍してほしい。
在日米軍のジョン・ドーラン司令官は17日、「被災した方々に対し、心より同情申し上げたい。つらい時だが、米軍は日本の被災者に寄り添っていきたい」とのコメントを発表した。
米軍向け軍事専門紙「ミリタリー・タイムズ」(17日付電子版)によると、派遣されたオスプレイは、南シナ海での日米比3カ国の合同演習を離脱し、米海兵隊岩国航空基地(山口県岩国市)から駆け付けた。
所属は在沖縄キャンプハンセン(名護市など)の第31海兵遠征部隊。沖縄県の翁長雄志知事が反対する普天間飛行場(宜野湾市)の移設先を拠点とする。
部隊は昨年4月、1万人近い死者を出したネパール大地震、2013年11月のフィリピン台風での救援活動や物資輸送、インフラ復旧に従事し、その活躍は折り紙付だ。
陸上自衛隊とも平成26年12月、熊本市を本拠とする第8師団とオスプレイを使った合同演習を実施、呼吸はぴったりだ。
熊本県の八代湾沖に停泊中の海自の大型護衛艦「ひゅうが」に着艦させ、給油や物資搬入に使うというから、何ともダイナミックな救援活動ではないか。今回も人員、物資輸送での活躍が期待される。加えて、日米同盟を目に見える形で具体化する効果は計り知れない。
残念なのは、オスプレイの佐賀空港(佐賀市川副町)の配備が遅々として進まないことだ。
防衛省は26年、南西諸島防衛や離島の多い九州・沖縄の災害救助や急患輸送などを目的に、オスプレイの佐賀空港配備を表明していた。
佐賀県が地元関係者の顔色をうかがい、態度をあいまいにしているその時、大地震が熊本を襲った。米軍のオスプレイが佐賀空港を訓練拠点化していれば、救援活動のあり方もまた、さらに充実したものになった可能性がある。佐賀県はその辺りのことを、しっかり見つめ直すべきだ。
飛行時の安全性は、米ホワイトハウスの職員が利用し、首都ワシントンの低空を日常的に飛んでいることで実証済みだ。
ワシントンに駐在していた2012年8月、森本敏防衛相(当時)と日本人記者団がオスプレイに試乗する機会があり、それを取材した。
だが、機内に沖縄の地元紙、琉球新報の特派員の姿はなかった。試乗したらその安全性をレポートしなければならず、日ごろのネガティブキャンペーンと矛盾するからではなかったのか。
オスプレイの専門家、リチャード・ウィトル氏はかつて、共に昼食をとりながら私にこう語った。
「軍用機に100%の安全性を求める方がナンセンス。危険な航空機なら搭乗員は救命用パラシュートを付けるはずだ」
大手紙や地元紙は安全性のほか、中国を刺激するという論調でオスプレイの存在そのものに懐疑的だ。有用な航空機を疫病神のように忌み嫌う向きは、熊本での献身的な彼らの救援活動を、どのような思いで見つめているのだろうか。
(九州総局長 佐々木類)
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