訪日外国人の急増を背景に一般住宅やマンションの空き部屋などに有料で観光客を宿泊させる「民泊」への関心が集まる中、テロリストや犯罪者ら“招かざる客”の拠点に悪用される恐れが指摘されている。宿泊施設の不足解消の決め手とも期待され、規制緩和やルール作りが本格化しつつあり、警察当局は実態把握や警戒強化などを検討している。
パリ事件の主犯格潜伏
「『民泊』が無軌道に広がれば大きなリスクになる。グレーゾーンの宿泊施設は、テロや犯罪のインフラとなりかねない」。ある警察関係者は指摘する。
旅館業法の目的は衛生状態の維持や宿泊者名簿による治安の確保などだ。「そうした網の目から抜け出た存在になれば、従来のホテルなどと比べ、はるかに目が行き届きにくくなる」と警察幹部は話す。
昨年11月に発生したパリ同時多発テロでは、犯行グループが知人を介して借りたとみられるアパートが潜伏先となり、治安当局による拠点制圧作戦で主犯格の男が死亡した。潜伏先として身元申告が求められるホテルを避けたとの見方もある。こうした経緯もあり、多くの外国人観光客が訪れる地域を管轄する警視庁など全国の警察本部は、民泊の広がりの実態把握に乗り出す方針だ。