その後も、自ら“エグロ”レーベルを運営し、女性ボーカリスト、ファティマのプロデュース、フローティング・ポインツ・アンサンブルというライブユニットで音楽を発信。世界各地でのDJツアーなど、常に話題を振りまいてきた。最近では、もう一人の英国ジャズDJのレジェンド、ジャイルス・ピーターソンが、最新のブラジル音楽を録音するために結成した「ソンゼイラ」というプロジェクトにも参加。民族音楽への接近をも試みている。
生演奏とエレクトロの融合
フローティング・ポインツが5年の時間と経験を経て完成させたファースト・アルバムが『ELAENIA』だ。コンピューターだけで音楽制作をするDJプロデューサーが多い今、多くのゲストミュージシャンの協力を得て、エレクトロニックミュージックと生演奏との融合を実現させたユニークな作品に仕立て上げた。
ストイックな人間による演奏は、機械による繰り返しかと錯覚させる。だが、反復されるフレーズは、曲中で徐々に展開や変化をみせ、ダイナミズムな広がりを感じさせる。マンチェスター時代には、聖歌隊に所属していた経歴を持つだけに、崇高で壮大なアレンジは独特だ。