「フローティング・ポインツ」こと、サム・シェパードの名前を耳にしたのは今から6年前、2009年のことだった。イギリスを代表するジャズのDJ、パトリック・フォージが、「クラブカルチャーを理解したうえで、音楽の専門的な知識を持つ若い音楽プロデューサーがロンドンにいる」と熱く語ってくれた。僕にとっては、フォージ自身が尊敬するレジェンドであるが、そのフォージが天才と絶賛したシェパードの能力に、マニアが注目するのに、さほど時間はかからなかった。
常に話題の中心に
シェパードが手掛けるのは、電子音を駆使したミニマルで、ファンキーなダンスミュージックだ。無機的だがエモーショナルという二律背反な個性を持つ彼の音楽は、テクノやハウス、ジャズやダブステップなど、異なるジャンルでも受け入れられていく。そして、クラブシーンで「バキューム・ブギー」や「ピープルズ・ポテンシャル」が大ヒットし、フローティング・ポインツの名は、世界中のDJやコアな音楽リスナーの間で認知されることになる。