元来疑り深く、あまのじゃくな僕は、人が騒げば騒ぐほど、その対象から興味を失い、逆に不信感を抱いてしまう。その僕の防御壁の高さゆえに、普通に聴けば気に入るはずの作品を見過ごしてしまうこともある。
2014年12月に突如リリースされた米国R&Bシンガー、ディアンジェロの14年ぶりのニューアルバム『ブラック・メサイア』。発売直後からメディアやSNSでの称賛の嵐に僕は思わず引いてしまったのだが、好きなシンガーであっただけに恐る恐る聴いてみた。ところが、僕の警戒心は偏見となってこのアルバムに正当な評価を与えなかった。絶賛されている割には、玄人受けする地味な内容だったし、盲目的な有名人崇拝に断固反対する僕は、自らの思い込みからこの作品を色眼鏡で見てしまったのかもしれない。発売から1カ月たち、先入観なく『ブラック・メサイア』を何度も聴いてみた。改めてフラットな気持ちで聴き直すことによって、僕はその魅力をようやく知ることになる。