10月26日に東京都内の病院で、外務省情報調査局長、サウディアラビア大使、タイ大使を歴任した岡崎久彦氏が逝去された。84歳だった。日本の国益にとって、とても重要な人物を失った。残念であるし、悲しい。
鈴木宗男事件で擁護
筆者が岡崎氏と初めて会ったのは、1994年のモスクワでのことだ。既に岡崎氏が外務省を退官され、文化人交流プログラムで訪露した。当時、エリツィン政権の戦略策定に大きな影響を与えていたブルブリス国家院(下院)議員との会談を筆者が設定し、通訳兼記録係をつとめた。95年4月に日本の外務省に戻った後も、岡崎氏が主宰する研究会にときどき呼ばれ、ロシア情勢やインテリジェンス・コミュニティーの状況について話をした。その機会に、民間のビジネス・エリートに通じるプレゼンテーションの技法、英語論文を速読するときのコツなどを岡崎氏は筆者にていねいに指導してくださった。岡崎氏は、筆者だけでなく、情報のセンスがある若手にていねいな指導をしていた。人材を育成することが外交力の強化になると言う外務省OBはたくさんいるが、実際にきめ細かな指導をしていたのは、筆者が知る範囲では岡崎氏だけだ。