≪伝統に培われた技を 新しい発想に生かすと「ものづくり」の可能性が広がる≫
古くは平家の落人伝説の里として、今は朝の連続ドラマ「まんてん」のロケ地、まんてんの里として観光スポットにもなっている屋久島北西部の吉田集落。豊かな自然に囲まれ、漁業とともに、ポンカン、タンカンの産地としても知られるこの地で、地域の人々が心身ともに豊かに暮らせることを願い、果実づくりを天職と選んだ人がいます。今回は鹿児島県の屋久島でタンカン作りに取り組む、田中農園の田中秀志(ひでし)さんを訪ねました。
豊かで美しい自然が残されており、島の面積の約21%がユネスコ(国連教育科学文化機関)の世界遺産に登録されている屋久島。亜熱帯に位置する周囲132キロの島は、標高1000メートル以上の山を45以上も持ち「洋上アルプス」ともいわれます。また、一年を通して降雨量が多く、長い年月をかけて原生林を流れ磨かれた水は、日本でも有数の名水といわれます。吉田集落がある北西部は、急峻(きゅうしゅん)で平坦(へいたん)な土地が少なく、冬になると海が荒れ、雪が降ることもあるという、豊かさと厳しさの二面性の自然環境にあります。