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小児がん専門医療施設「チャイケモ」(下) 病気以外で苦労する必要はない

2014.10.2 16:55

寄付の協力者を記した施設のすごろく。マスを「買う」ことがハウスの支援になる=2014(平成26)年9月19日、兵庫県神戸市中央区(高千穂大学_有志学生記者、佐藤崇宏撮影)

寄付の協力者を記した施設のすごろく。マスを「買う」ことがハウスの支援になる=2014(平成26)年9月19日、兵庫県神戸市中央区(高千穂大学_有志学生記者、佐藤崇宏撮影)【拡大】

  • 子供たちが動き回ることができるよう、広いスペースが設けられている=2014(平成26)年9月19日、兵庫県神戸市中央区(高千穂大学_有志学生記者、佐藤崇宏撮影)
  • チャイルド・ケモ・クリニックの楠木重範(くすき・しげのり)院長=2014(平成26)年9月19日、兵庫県神戸市中央区(高千穂大学_有志学生記者、佐藤崇宏撮影)

 【Campus新聞】

 「チャイルド・ケモ・ハウス」(以下チャイケモ)の活動初期からプロジェクトの中心的な役割を果たし、現在はチャイケモに併設されている「チャイルド・ケモ・クリニック」で院長を務める楠木重範(くすき・しげのり)先生に話を聞いた。

 「理想」を作る

 ――チャイルド・ケモ・ハウスを作ろうとしたきっかけ

 「小児がんという病気は医療の中ではメジャーではないので、広く知ってもらうことによって、小児がんに対する偏見を減らしたいと思った。また、優秀な人材が小児がんの分野に入ってくるような環境を作りたいと考え、研究会を立ち上げた。研究会では現在、今何が問題になっているかについて、医師や看護師、患者、家族、その他さまざまな立場の人から意見を集め、がんの子供とその家族にとって、理想の病院とは何かを考え、それをまず作ろうというところから始めた。チャイケモを作り、うまく運営していくことが目的なのではなく、チャイケモが新しい医療の形や概念を広めるシンボルになり、社会が変わることを目指している」

 「海外ではこういった施設は寄付など社会からの支援で成り立っている。社会が子供を守るということが、海外ではできて、日本ではできないというのはおかしい。チャイケモも基本的に寄付で運営している。日本における、そういった新しい医療の形のモデルになれればと考えている」

 ――現在の小児がん医療を取り巻く問題は

 「自分の子供が小児がんになったときに、まずどこの病院に行けば間違いないのかということがわかりにくい。それゆえに最初の医師に言われたままの病院を選び、治療を受けざるを得ない現状がある。インターネットが普及し、いろいろな情報に触れられる機会は増えたものの、それでもまだ不十分で、誰もがきちっとした医療を受けられるような状況にはない」

 「これはすべての病気について言えることだが、本来は病気になったこと以外で苦労する必要はないはず。しかし、現状では社会的な問題などによってり、病気で苦しむこと以上の苦しみを請け負わざるをえなくなっている」

 選択の幅広げる

 ――チャイケモが目指すものは

 「現状では小児がんの治療の際、病院に入院するか、在宅かという2つの選択肢しかない。大きい病院は安心できるかもしれないが、自由がない。しかし、家に帰れば不安は強い。子供とその家族は、この極端などちらか一方を選択しなければならない。病院と家の中間的な施設であるチャイケモが、選択肢の一つを担い、選択の幅を広げられるようにしたい。

 ――小児がんの子供は治療を受けながら育っていかないといけない。教育の問題は

 「患児の治療中の教育には2種類があり、一つは学校の授業で学ぶような学科的な勉強。これはネット環境などを使って解決できるかもしれない。もう一つは人間関係などの社会性を学ぶ勉強。これもネットでつなぐことや面会制限を緩めて人と接する機会を増やすことで対応できる」

 「それに加え、患児が『がんになって得をした』と思えることがあればいいと考えている。例を挙げれば、この施設に入ったから英語を話せるようになったとか、子供の目線で『得をした』という感覚を持たせてあげられれば、治療で周りから遅れたという意識も弱まり、社会性を継続することもできるのでは」

 ――家族も我慢を強いられるが

 「チャイケモにはレストランの横に喫煙室が設置してある。また、泥酔しなければお酒を飲んでもいいことになっている。他人に迷惑をかけない範囲であれば、吸いたい人や飲みたい人に我慢を強いることはない。『子供が病気になったんだから我慢しなければ』といった引け目のようなものから、気が付かないうちにストレスがたまっていく。長期的に見ると、家族にストレスがたまった状態は子供にもいい影響を及ぼさない」

 ――東京で初めてシンポジウムを開く

 「10月12日に東京で開催するシンポジウムは、『日本小児がん医療のグランドデザインを語ろう』がテーマ。小児がん分野の権威と呼ばれるような人たちと忌憚(きたん)なくディスカッションする。タブーは無しで、現場の本音を聞いてもらえるようなシンポジウムにしたい。現場では無理だと思っていることでも、外から見ればできそうだと思うことも多々ある。ぜひ参加者の方にはそういった部分への質問をしてほしい」

 シンポジウムへの参加申し込みはメールで受け付けている。件名を「東京シンポジウム申込」とし、氏名、所属、連絡先を記入し、chaikemokango@kemohouse.jpまで。シンポジウムの詳細はwww.kemohouse.jpで。(今週のリポーター 高千穂大学 有志学生記者 佐藤崇宏/SANKEI EXPRESS

 【編集後記】

 当たり前にできるはずのことが、病気だからといって、できなかったり、我慢をしなければならなかったりするのはおかしい。このことを今回の取材で認識させられた。

 チャイケモには、当たり前の空間が広がっている。しかし、この当たり前は、現在の医療の世界では非常に先進的だ。チャイケモが起こす、あたたかい変化の波が広がっていくことに期待したい。(高千穂大学 有志学生記者 佐藤崇宏)

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