さて私は、そこまでの思いをもって舞台に立ったのかと問われると怪しくなってきます。毎年とても緊張するので、今年はリラックスすることを心がけ体操やエクササイズのような気分で舞ってみることにしました。雑誌の撮影なども緊張しないので、これは撮影なんだと思ってみました。そのおかげで、全く緊張せず、前半は身体が軽くて気持ちよく舞えました。しかし後半にさしかかったところで、音楽が止まり恥ずかしさと申し訳なさとで、とぼけたような退場をしてしまったのです。こういったアクシデントは、常日頃の心がけが試されるような気がします。能舞台には、本当に神様がいらっしゃるんだなと思いました。
私の出番の次は、ベリーダンスや下北音頭のバンド演奏など、新しい演目が次々と披露されました。北澤八幡神社の奥様が、「下北沢は芸能の街ですものね」とおっしゃっていました。いつお会いしても本当にすてきな奥さまなんです。来年の舞台に気持ちを切り替え、1年後は、芸と能の意味をしっかりかみしめて舞台に立ちたいと思いました。(イラストレーター 平松昭子/SANKEI EXPRESS)