【和のスタイル】
北澤八幡神社の秋の例大祭で、演目「京の四季」を舞わせていただきました。毎年この時期は、お天気が不安定。雷のゴロゴロいう音の中、後半にさしかかったところで音楽が止まってしまいました。停電で屋外の客席や屋台の明かりなど全て真っ暗になりました。能舞台の照明だけが明るく私を照らしました。無音のまま舞い続けようかどうしようか一瞬迷いましたが演目の途中で動きをやめ、立ったまま軽く会釈をした後そそくさと退場しました。こんな経験は初めてだったので舞台を下りた後、考え込んでしまいました。見に来てくださった方々に、お礼とおわびの気持ちを伝えるために、正座して深々と頭を下げるべきだったのではと後悔しました。漫画『ガラスの仮面』の主人公の北島マヤは、舞台で毎回いろんなアクシデントにあいます。まんじゅうを食べるシーンでは、まんじゅうが泥まんじゅうにすり替わっていても、舞台を壊してはいけないと覚悟を決め、泥まんじゅうをじゃりじゃりと音を立てながらおいしそうに食べました。漫画史に残る名場面です。彼女は舞台しか生きられる場所がないと信じていたので必死でした。