まさかの金獅子賞
実際、映画化の発端となったカルヴィーノもキューバ生まれのパルチザンであるし、ロージ監督はアフリカ・エリトリア生まれのトルコ育ち。さらに言えば、米ニューヨークに移住し、ニューヨーク大学映画学科を卒業後は、インド全土を旅し、中編「Boatman(原題)」の監督を務め、名だたる映画祭で多くの賞を手中におさめた。行く手にはいつも「アウトサイダー」という立ち位置を想起させる生き方が顔をのぞかせる。ベネチア国際映画祭の授賞式に「まったくの普段着」で出席したのも実に彼らしい。
「普通は蝶ネクタイにタキシード姿で出席するものですが、私はベネチアにそれらを持っていきませんでした。だってドキュメンタリー映画が金獅子賞に輝くなんて統計的にもあり得ないことでしたからね。僕は史上初めて普段着で受賞スピーチをした映画監督でしょう」。8月16日から全国順次公開。(文:高橋天地(たかくに)/SANKEI EXPRESS)