ヤシの木につく害虫の研究に執念を燃やす植物学者、テヴェレ川でウナギを釣るボート生活者の漁師、ブルジョアを装う没落貴族の夫婦、狭いアパートの一室でたわいもない話を延々と続ける年の離れた父と娘…。カメラはGRAの外側に生きる人々に寄り添い、その心象風景を優しく切り取っている。「彼らの存在ってフィクションよりも面白いでしょう」。ロージ監督は胸を張った。
「アウトサイダー」は本作のキーワードだ。映画に登場する観光名所のほとんどが集中するGRAの内部には目もくれず、登場人物もちょっと風変わりな人ばかり。ロージ監督は「2つの異なるローマがあったとしたら、当然、知らない方に興味を持ちます。私ですらGRAの外側は知らない場所ばかりです。映画の原題を『聖なるGRA』(Sacro GRA)としたのは、GRAの外側が神秘的なものに思えたからですよ」と説明した。