全長70キロ、1日の交通量はざっと16万台-。ローマをぐるりと囲む外環高速道路「GRA」の周囲に生きる人々の日常を追ったドキュメンタリー映画が、昨秋(2013年)の第70回ベネチア国際映画祭を大いにわかせた。ドキュメンタリー作品としては史上初めて金獅子賞(最高賞)に輝いたのだ。作品のタイトルも内容そのままに「ローマ環状線、めぐりゆく人生たち」。プロモーションで来日したジャンフランコ・ロージ監督は「私の作品に登場するローマはGRAの外側の部分。普段、皆さんが意識すらしない、見たこともないローマの姿ばかりでしょう」とウインクした。
「外側」に生きる存在
ロージ監督はイタリアの国民的作家、イタロ・カルヴィーノ(1923~85年)の「見えない都市」(72年)を読み、都市と住人が生み出す混沌(こんとん)とした世界に関心を持った。ほどなくドキュメンタリー映画で彼の小説の世界に肉薄しようと考え、制作に着手したという。