スコットランドの人気バンド「ザ・プロクレイマーズ」のアルバム「Sunshine on Leith」(1988年)のナンバーに乗せて、登場人物たちが実に生き生きと人情味たっぷりに描かれている。監督は登場人物の構築では「歌詞をじっくりと味わったうえで、登場人物はどんな人間なのかをゼロから作り上げていきました。かなり時間をかけましたよ」と振り返った。
そんな映画作りのスタイルをとったのは、オペラの舞台監督でもある妻の「音楽は登場人物の心の声を直接的に表現できる」という主張を意識してのものだったそうだ。それぞれが傷つき今にも空中分解しそうな家族の姿が、どこか温かく味わい深いものとなったのもうなずける。
徹底的な人物造形
若い俳優たちに対して、監督は自分が演じる人物のバックストーリーをまとめさせ、レポートで提出させた。しっかりと自分のパートを掘り下げ、登場人物の関係性をも含めて完全に体得させるのが狙いだった。その後、みんなでレポートを持ち寄って、さらにバックストーリーをすり合わせて完成形へと近づけた。監督自身も経験したことがない徹底的な人物造形を課した訳だが、その意図は明確だ。