ところが、ガムテープ太鼓が鳴り響き、演奏が始まると、その距離がグンと縮まった。ステージと客席が一体となり、リズムをとって拍手し、「イェーイ!」とノリノリになった。プロのロックバンドの迫力を見せつけたその姿は、とても誇らしく見えた。
世界を生き抜く術
障がいのある人、不登校だった人、引きこもりだった人……。せちがらい今の世の中で生きづらさを抱える人たちの中には、音楽で救われる人がいると、哲ちゃんは信じている。そして彼らと通じ合うためには、その人の中にある「インナーリズム」が音楽を奏で始めるまで、じっくり待つことが大切だと言う。特に他者とのコミュニケーションが苦手な人にとって、たとえそれが善意でも一方的な価値観の押しつけは迷惑以外のなにものでもない。
サルサのメンバーは、自身のもつインナーリズムによってバンドの一員になり、自由を手に入れた人たちだ。