経験豊かな中堅俳優であっても、作品への思いや仕事への心構えを的確に表す言葉に窮してしまい、インタビュー自体、なんとなく気まずい雰囲気のまま終わってしまうということも、ときにはある。逆に、フランスからやってきたアナマリア・ヴァルトロメイ(15)は、取材相手が少女であることをつい忘れてしまうほど成熟した話術をもつタイプだ。彼女が紡ぎ出す、知的で洗練された言葉を聞いていると、思わずうっとりとしてしまう。それは、ヴァルトロメイが、いっそ退廃的といっていいほどの大人の色香を周囲に常に発し続けていることもあるのだろう。
美し過ぎる娘が“狂わせてしまう”のはなにも記者だけではない。ヴァルトロメイの初主演映画「ヴィオレッタ」(エヴァ・イオネスコ監督)では、写真家の母親を狂気へと駆り立ててしまう。母親が娘のヌードを撮影して世界で物議をかもした写真集「エヴァ」(1977年)の被写体こそ、モデル、女優としても活躍する監督自身だった。写真集の発表から30年以上を経て、彼女は実話をベースに「私はママの所有物ではない」との思いを本作にぶつけた。