医師として医学の発展に寄与してきたが、その一方で子供たちに実際に手術の様子を見学してもらう「病院見学」など、医師の仕事を外部へと積極的に発信してきた。「病院に来る機会は病気のとき以外なかなかない。けれど、子供たちが本物の医療現場を見て感動して、医者や看護師になりたいと思ってくれれば、どんなにステキだろうって」
本書は中学生に向けたシリーズの中の一冊としての位置づけだが、メッセージは子供だけに向けたものではない。「収入でも肩書でもなく、子供たちに『これが自分の仕事だ』と胸を張って見せることができる仕事をしよう、ということかもしれないですね」。厳しく、熱い。命と仕事への真摯な思いは、大人の胸をも震わせてくれる。(塩塚夢、写真も/SANKEI EXPRESS)
■すま・ひさよし 1950年、神戸市生まれ。大阪医科大学卒業。須磨ハートクリニック院長、順天堂大学客員教授。世界初の胃大網動脈を用いた冠動脈バイパス手術や日本初のバチスタ手術を成功させた。NHK「プロジェクトX」への出演のほか、ドラマ「医龍」「チーム・バチスタの栄光」などの監修も務める。他の著書に『タッチ・ユア・ハート』。
「医者になりたい君へ」(須磨久善著/河出書房新社、1296円)