大自然に生きる野生生物を題材にしたドキュメンタリー作品の第一人者、パトリック・モリス監督(48)が、大好きなアフリカを舞台に手がけた作品は、新作「ネイチャー」で10作目となった。ケニア、エチオピア、ナミビアなど13カ国で573日をかけて撮影した膨大な映像素材を根気よく編集し、丁寧に作品へと紡いでいった渾身(こんしん)の映像からは、自然に寄せる深い愛情と畏怖がおのずとにじみ出てきて、見る者を厳粛な気持ちにさせてくれる。
「今まで手がけた10本の中で一番野心的な仕上がりとなりましたよ」とモリス監督。共同監督のニール・ナイチンゲールとコンビを組み、「ディープ・ブルー」「アース」を製作した「BBC EARTH」のスタッフを率いて3D映像で撮り下ろした。アフリカ中央部・ヴィルンガ山地に広がる謎めいた熱帯雨林の森、ザンベジ川の流れに乗って毎分約5億リットルの水がジェットコースターのように落下するビクトリアの滝の荘厳な風景は、幻想的で、夢を見ているかのような感覚にとらわれる。100万羽を超えるフラミンゴの群れ、断崖を走り回るケラダヒヒの家族、愚鈍なヌーに襲いかかる体長7メートル、体重1.5トンはあろうナイルワニの姿は迫力満点だ。