葬儀のイタズラは…
アーヴィンはノックスビルが理想とする老人像かと思えば、意外にも正反対の答えが返ってきた。「確かにあれだけ世の中に強気でいられるのはうらやましい。でも、僕にだって道徳というか、常識がある。8歳の孫と一緒にビールなど飲まないですよ。もちろん孫が成人すれば話は別ですがね」。常識人、ノックスビルをさらに印象づけようとしたのかは定かでないが、感動のラストを準備したことを明かしたうえで、「作品はおじいちゃんと孫のラブストーリーなんですよ。だから観客に感情移入してもらうためにも、ハートフルな部分が欲しかった。もうイタズラは十分過ぎるくらいファンに提供してきましたからね」と言葉を継いだ。
とはいうものの、ノックスビルは撮影中に一般の人々をだまして、驚かし、それを撮影する行為にためらいはないのだろうか。「確かに葬儀中に地面に死者を落っことしてしまうシーンについては、何も知らずに参列してくれた素人の出演者たちに申し訳なく思っています。彼らは私たちが参列を頼んだ葬儀関係者なんですよ。『死者は家族も友達もいない孤独な方だから』といった具合にお願いしましてね」。ノックスビルは撮影後に「どっきりさせるつもりでした」と事情を説明したところ、全員は怒らなかったばかりか、ハグして歓迎してくれたそうだ。