免疫力の不思議　大和田潔 (1/2ページ)

　【青信号で今週も】

　ワクチンは、注射や点鼻、内服などでウイルスをあらかじめ体に取り込んで、ウイルスの形を学んでおく方法です。体はかつて出会ったことのあるウイルスを覚えているので、そのウイルスに出会うと効率よく免疫力を発揮して速やかに駆逐します。ワクチンは、目的のウイルスを増やして弱毒化して作ります。そのため、未知のウイルスのワクチンを作ることはできません。

　ところが、愛知県の男性が、日本でまだ流行していない上に、これまでかかったこともない鳥インフルに対して抗体を持っていることを藤田保健衛生大が明らかにしました。この男性は過去に、日本で流行したいくつかのインフルエンザウイルスに感染していただけでした。それまでの人生の中で、かつて感染したウイルスの中に鳥インフルエンザに似た型のウイルスがあったとのことです。

　生き物の免疫力のしなやかさや強さを感じる報告です。これまで出会ったウイルスから類推して、未来に出会うかもしれないウイルスにピッタリの免疫を作る離れ業です。新型インフルエンザが流行すれば、多くの人々が感染することが予想されます。その中に、初めて出会うウイルスにもかかわらず免疫を既に持っている人は重症にならずに治癒するでしょう。どんなウイルスが流行っても、人類の誰かは生き残るという希望を抱かせてくれます。

発酵食品を食べて免疫力を高める