しかも、米国議会は今秋の中間選挙を控えている。オバマ民主党政権がライト・トラック関税で譲歩するのはいかにも具合が悪い状況は、50年前と変わらない。
TPPで窮地
米国では、議会が通商交渉の一つ一つの項目の可否の権限を持っている。多岐にわたるTPPなどの交渉の場合、議会が合意案を一括審議し承認するようにしないと、米政府は他国との交渉がはかどらなくなる。そこでオバマ政権は昨年(2013年)12月に一括交渉権限を議会が大統領に与える貿易促進権限(TPA)法案を議会に提出したが、上院の民主党トップであるリード院内総務は法案審議を留保している。TPA法案が成立しないと、米通商代表部(USTR)は事実上、TPPのような多角的通商交渉を進められなくなる。
オバマ政権はTPPで日本の農産物関税撤廃などで攻勢をかけているように見えるが、窮地に立っている。米国に甘い日本のメディアはとかく日本の農産物保護だけをやり玉に挙げて、日本にとって不利な方向に世論を誘導しかねない。(産経新聞特別記者・編集委員 田村秀男/SANKEI EXPRESS (動画))