天然木材と正確なろくろ挽(び)きが可能にする、温かみを感じる“厚み”と気品高い“薄さ”の組み合わせ。市場に出回っている他の品々とは一線を画す木製漆器を制作するのが石川県山中地方に店を構える我戸幹男商店(がどみきおしょうてん)だ。
繊細に人間の心を理解
周辺は山間の自然に囲まれ、美しくも厳しい、まさに北陸の気候。そんなショールームに入るや否や、整然と並べられた美しくも洗練されたたたずまいの漆器に包まれ、思わず息をのむ。
我戸幹男商店の品の特徴は、天然木材の温かみと美しいフォルムから感じるモダニズムの融合にある。
「これらはどのように生まれるのだろうか?」。この種の感動に出合ってしまうと、自分ではどうしようもない、いつもの衝動が高まってくる。その時をまるで見透かされたように、「私たちの品々がどのように生まれるかというと…」と我戸幹男商店の方の声が聞こえ、私の品を見つめる目は声の聞こえる方に反転した。それまでせっかく忙しい合間をぬって説明してくださっている声を背にして、知らず知らず並べられた品々の魅力に心を奪われてしまっていたのだ。