メキシコ人の友人ルイスは、海外を旅行する際、現地の移動手段としてレンタカーを借りる。旅先でその国の人々や文化をよりよく知るためで、地元の人を乗せては会話を交わし、ガイドブックには載っていないその国の一面をのぞくのだという。
彼はキューバ旅行でレンタカーに乗せたキューバ人のうち、特に印象に残った女性について話してくれた。女性は、服役中の夫に面会に行く途中だった。夫が犯したのは、なんと家畜の馬を殺した罪。ルイスの説明によると、キューバでは、牛馬に限らず家畜はすべて国の財産とみなされるため無断で殺すと犯罪になるという。
馬は急死したのだが、この女性の夫はそれを役所に届け出ずに、販売あるいは食用目的で冷蔵庫に保管した。それを隣人が密告、裁判では本当の死因を明らかにすることもなく馬を殺した罪で有罪になったという。突然刑務所暮らしを余儀なくされた夫と、離れて暮らす妻のことを思うと、いくら法律に違反したとはいえ、理不尽なことのように思えてしまう。この女性も政府への批判や不満を車内で漏らしていたそうだ。