インタビューし公表を
猪瀬氏は、大御所のノンフィクション作家であるという自負を持っているはずだ。それならば、特捜の取り調べに応じるのとは別に、5000万円をめぐる真実を、ノンフィクション作家の職業的良心に従って、国民の前に明らかにすべきだ。筆者が『自壊する帝国』(新潮文庫)で大宅壮一ノンフィクション賞を受賞したときの選考委員の一人が猪瀬氏だった。不肖、筆者としてもそのときの「お礼」をしなくてはならないと思っている。力不足で恐縮だが、「徳洲会」と猪瀬氏との関係、特に5000万円の現金授受の詳細について、筆者は猪瀬氏からインタビューを取り、国民に公表したいと考えている。特捜検事のように、あらかじめ決まった筋書きを押しつけるようなことは絶対にしないので、猪瀬氏におかれては、取材を受けることについてぜひ前向きに検討していただきたい。
猪瀬氏のような、他者に対して厳しく、自分に対して甘い人間がどのようにして形成されたのかについて、筆者は、強い関心を持っている。「政治の素人だ」と開き直るような「本物のニセモノ」が二度と政界に出てこないようにするために、猪瀬直樹研究が必要だ。こういうことがあると筆者自身、ノンフィクション作家であることが恥ずかしくなる。(作家、元外務省主任分析官 佐藤優(まさる)/SANKEI EXPRESS)