だから、米国で公開された情報が当事国の日本では確認できないという、国際的に失笑を招く状況となる。その結果、政治家と秘密指定権限を持つ官僚に対して、国民がシニカルとなり、「合理的無知(あきらめによる無関心)」に陥るという悪循環を招いていることが怖い。情報は国民のものであり、しっかりと情報を提供された賢い国民の存在が、民主制を維持するうえで不可欠だ。
官僚が独善的かつ恣意(しい)的に指定した秘密にジャーナリストが近づこうとすれば、両者ともに罰せられる可能性さえあるから、官僚の関わる案件の調査報道は極端に困難になる。国政を担う国会議員も、国会議論の資料として必要な指定秘密に近づきにくくなる。
情報が遮断されるとどうなるのか。その最悪例が北朝鮮である。国民が飢えているのに平壌の幹部だけがぜいたくの限りを尽くしている。立法・行政・司法の三権の執行権限が労働党トップ金正恩(キム・ジョンウン)第1書記に集中し、その意に沿わなければ、ナンバー2の張成沢(チャン・ソンテク)国防副委員長の失脚が示すように、裁判抜きで葬られる恐怖社会となる。中国は北朝鮮ほどひどくはないが、国民には中央政府の政治家を選挙で直接選ぶ権利はなく、メディアも政府・共産党の「拡声器」にならざるを得ない。