諫早湾(長崎県)の奥をふさいでいる堤防の水門を開かないよう、長崎地裁が国に命じました。3年前に福岡高裁が開門を命じたのと逆で、国は板挟みになっています。
Q 水門を開けるか開けないかが、なぜ問題になっているのでしょう
A 諫早湾がある有明海で魚や貝がとれなくなっています。漁業をする人たちは、諫早湾を堤防で仕切って陸地(干拓地)にした国の「諫早湾干拓事業」が大きな原因だと訴えています。福岡高裁はこの意見を認め、水門を開いて自然に近い状態に戻し、海の状態が良くなるか調べるよう命令したのです。
Q 反対している人がいるのですか
A 干拓地で農業をしている人たちです。堤防と干拓地の間には淡水の池がありますが、開門すると海水が入って農業用水に使えなくなり、畑も塩害を受けると心配しています。長崎地裁は農家の訴えを認め、開門をやめるよう命じました。
Q 裁判所が逆の判断をするのは珍しいの
A 福岡高裁判決は当時の菅直人(かん・なおと)首相が上告を断念し、既に確定しています。確定判決がある場合、同じ問題で裁判所が別の結論を出すことは、普通はありません。ただ今回は高裁の裁判に参加してない農家が当事者で訴えの内容も違うため、地裁は確定判決に縛られずに判断したのです。