政府歳入の半分以上を占める原油輸出量は激減し、インフレ率は40%を超える。国民の不満の矛先が指導部に向かいかねない状況だった。
「妥協者と呼んではいけない」。最高指導者アリー・ハメネイ師(74)は(11月)3日、欧米に融和姿勢を示すロウハニ師を保守強硬派が激しく批判する中、核交渉チームをかばった。
現実味増す攻撃
米国の焦りも相当なものだ。
核開発の進展がこのまま続けば、イランが潜在的な核兵器製造能力を獲得するのは時間の問題。そうなれば同盟国のイスラエルによる攻撃は現実味を増し、米国自らも軍事介入の決断を迫られる事態となる。
バラク・オバマ米大統領(52)はロウハニ政権との間での外交解決に賭ける一方で「全ての選択肢を排除しない」と再三強調してきた。
しかし、イランの核関連施設は各地に分散し、地下に設置されたものも多い。「軍事攻撃は核開発を後退させることはできても、終わらせることはできない」。米政府高官は核協議に先立つ(11月)6日、記者団に断言した。原油輸送の大動脈ホルムズ海峡に面し、強大な軍事力を持つイランがテロ活動を含めて報復に出れば、「予想がつかない結果をもたらしかねない」(米政府高官)。イラン核問題は、中東情勢を一変させかねない「時限爆弾」そのものといえる。